いもめも

プレイしたゲームの雑感とか

PS「クーロンズ・ゲート-九龍風水傳-(クーロンズゲート)」(1997)

クーロンズ・ゲート

 往年の怪作、クーロンズゲートこと「クーロンズ・ゲート-九龍風水傳-」についてのススメとマトメ。

 オリジナルは初代PSですが、現在はPS storeよりPS3PSP、PS Vita向けのアーカイブス版を購入可能です。

クーロンズ・ゲート-九龍風水傳- | ソフトウェアカタログ | プレイステーション® オフィシャルサイト

 

 

 

[未プレイ向け]クーロンズゲートのススメ

システム:4/10

グラフィック:9/10

音楽:10/10

シナリオ:6/10

世界観:10/10

要素:ADV、RPG、ホラー(グロ)、お使い、探索、遊び切り推奨

初見プレイ時間:20時間強

 

「世界観の圧倒的完成度と濃度」

  勧めるにあたって伝えたいのは一つ。ググれ。そして画像欄に広がる薄汚れたアスファルトの壁から、下水と埃のにおいを感じたなら、そしてそこに飛び込む覚悟ができたなら、遊べ。

 クーロンズゲートのススメをバロメータ化の上で行うのはナンセンスにもほどがあります。グラフィックも、音楽も、演出も、シナリオも、そしてシステム的要素までもが、九龍城の総体さながらに、圧倒的世界観の中にごちゃごちゃと飲み込まれて、一つの名前を与えられているような状態に感じられます。悪趣味なネオンの断崖と、その光の届かない陰湿な違法建築の塊を演出するために全てが存在しており、その演出の完成度におけるバロメーターとするならば、すべての項目は10点満点と言って差し支えないでしょう。ですから、上記のバロメータはあくまでほかのゲームとの比較を行った際、といったところでなんとなく見てもらえると幸いです。

 このゲームでやるべきことは、圧倒的な「陰界九龍城」世界の体験。すべての要素は舞台となる陰界の九龍城を味わうために存在するといっても過言ではありません。そのために生まれたあらゆる冗長を楽しめる余裕がない場合にはなかなかプレイが苦しいかと思います。片手間プレイや空き時間プレイだと内容が抜けがちになるので、一気に遊び切ることを推奨します。

 

各要素におけるポイント

 システム面においては、アイテム回り・戦闘回りに説明不足が目立ちますが、不便と感じるほどのものではありません。戦闘は多少後先を考える必要はあるものの、単純作業になりがちであり、やりこみ要素的なボスキャラも存在しないので、進行上の演出程度にとどまっていると感じられます。その他特徴的なシステムについても特別な操作感を得られるということもなく、演出面の補助にとどまっているものがほとんどです。ただ、ゲーム中に存在するポータルサイトとそのデバイスである「クーロネット」は、セーブデータの管理やNPCとのメールのやり取りなどを行うためのシステムとして、完成度が高く、見どころの多い要素に思えます。

 グラフィック面は、クーロンズゲート個性を示す一大要素として前面に現れており、それに恥じないだけの質の高さを持っています。一番癖の強い要素ですから、ここに耐えられない人はこのゲームとはお別れするのが吉。

 特に街中のjpegダンジョンはかなり精細に作りこまれており、プレイヤーに対して強烈な「嫌な印象」を与えます。そこに住まう住人達も当然個性的なデザインのキャラクターばかり。敵味方問わず忘れることを許さないほど強烈なビジュアルを有しています。モノとイキモノが絶妙のバランスで配合され、しまいにはどちらがどちらだかわからなくなるようなキャラクターたちは、他のゲームには決して居得ないデザインだといえるでしょう。

 その一方、実際に主人公が動き回るリアルタイムダンジョンについてはそのほとんどが九龍城砦のマンションであり、集合住宅という特性上、単調で同じような風景が続きがち。そのうえ次の目的地は随所で挟まるガイドNPCとの会話で一度示されるきりなので、同じように見える地形のそれぞれに想像力を働かせて位置関係を把握したり、マップ機能でマーキングするなどする必要が生じます。一度プレイが途絶えると一切わからなくなる人がほとんどでしょう。jpegダンジョンとは対照的な、味気ない単調な世界を楽しめるかどうかは人それぞれです。

 音楽を担当しているのは「世にも奇妙な物語」のテーマ曲などを作曲した蓜(はい)島邦明氏で、チャイニーズエスニック的な要素と環境音とを組み合わせた音楽は、不気味さやコミカルさ、シュールさを表現するのに非常に大きな役割を果たしています。

 シナリオは耳慣れない難解な単語こそ多いものの、分岐もなくすっきりしています。テキストは陰界のそれぞれの住人の思いや行く末を描いており、彼らの言葉をつぶさに受け止めていくことも世界にのめりこむ大きな助けとなります。主要なキャラクターはフルボイスとなっており、息を吹き込む声優についても非常に豪華な面々がそろっていますので、各自調べてみることをお勧めします。大御所の快演(怪演?)に正気を蝕まれまくります。

 お世辞にも、システム的な楽しみ方に向いているゲームとは言い難いに違いないこのゲームに、未だに礼賛する人々とそのコミュニティが存在し、かつPSVR向けの新作に向けたクラウドファンディングに多くの支援が集まり実現したのは、ひとえにこの病みつきになる世界観にはまり込めたか否かではなかろうかと思います。ハマる人にもそうでない人にも、唯一無二の九龍城。簡単にお勧めできる場所ではないですが、興味があるなら行ってみて損はありません。

 

[既プレイ向け]クーロンズゲートのマトメ

 何だこのゲーム。ということで、自分にはガッツリ刺さりました。やっちゃいけないんじゃないの、ってことをひたすらやってのけるキャラクターデザインは、作り手のエゴの塊といった感じで、不快感が一周回って快楽になっちゃう感じ。いったい何をどう考えたらあんなものが生まれやがるんだって、アーカイブス(Kowloon's Gate Archives?クーロンズ・ゲート アーカイブス? 通常版)も購入してしまったのですが、見事に何考えているんだかわかりませんでした。というか、直感的な制作環境だったんだなって。作り手からしてすでに邪気に飲まれているんじゃないかな、あれ……。 

 そういったところで、やはり外見的要素に一番強いアクを味わわされているような気もしますが、実際にプレイしてみたらわかるのは音楽やjpegダンジョンのカメラワークも含めた、リアルタイム性のある没入感の高さ。静止画で見るよりも圧倒的で、不快痛快といった感じ。VR化の際に公式からも「酔いゲー」と呼ばれていましたが、まさにその一言に尽きるのかなと思います。体も「酔い」の状態になるのですが、気持ちも、耳も、全部酔わせる。ものすごい濃度の臭いみたいなものを放っているんですよね。そこが好き嫌いの分かれる所以にもなっているかとは思うのですが。

 奇天烈なデザインのキャラクターは、外見だけ見ればぶっ飛んでいますが、実は中身はそうでもないのかな、なんて思いながらプレイしていました。そうでもない、と言ったら語弊かもしれません。ともかく、彼らもまた「人間」という点では我々と変わらないのではないかといった観点です。現実世界においても、どんな人間の心の中にでも、異質なものは巣食っていて、例えばそれは愛と名付けられた執着であったり、忠誠と名付けられた憎悪だったり……いや、よくわかりませんけど。ともかく、そういったものの表出が、陰界の空気の中でさらにとがったものとして我々に映っている。だから、彼らの個性がより一層不気味なものに映るといった感じなのかなと思っております。そういった解釈においては、陰界九龍城のキャラクターたちは、人間という存在を正直に描いたキャラクターばかりだなあと感じます。意外と、自分の親しい人間も、少し興奮して感情があらわになっているときなんかは、彼らと変わりなかったりして。

 個人的には季弘が一番好きでした。ただの便利屋に見せかけて、彼はストーリーにおいてかなりの重要人物ですよね。ストーリー上数名しかいないタイムトラベラーの一人である彼が、最後はその手段を主人公に託して、自らの生きるべき世界を決める。モノ、ヒトを通して世界を観察し、それを愛する、彼の人柄には惹かれるものがあります。ああいったキャラクターを演出できるところは、シナリオ・テキストの力でもありますし、故・松尾銀三さんが吹き込んだ声がその力をさらに強大なものにしているように思えます。声優の皆さんの為せる業のすばらしさ、その命を吹き込む技量については、このゲームをプレイしていればつくづく染み入られますね。

 あらゆるキャラクターたちの終わりがあり、始まりがあり、そして今があるというのを感じられ、それが一つの街の中でうごめいている。自分はこういった作品に突き刺されるきらいがあって、キャラクターの生命力を飼いならしている空間が見事に描かれていればいるほど、その世界のリアリティに感動します。クーロンズゲートは、難解に感じられる場面もありますが、そういった点も含めて人間臭い。ひたすらに直感的であるからこそ、生々しい。そういったところが見事にかみ合った作品だと思っています。ついついたまにプレイしたくなるんですけど、たまにプレイすると何がどこで何なんだかわからない、ってのは残念ですね。

 そんなこんなで、自分の中にめちゃくちゃ深い爪痕を残してくれた作品でした。ありがとうクーロンズゲート